言葉が人をつくる~人生日記2~

あるとき母の言葉が気になりました。

「次女は、かわいそうだったからね。」
というのです。

思い返してみると、次女のことを「かわいそう」というのを何度か聞いていました。

「なんでかわいそうなの?」
と小学2年生くらいのわたしは聞いてみました。

「2歳になる前、親せきの家に預けていたから。」
というのです。

どうやら、母は無理してわたしを出産し、体調を崩して寝込んでしまったそうです。

3歳になる長女は、大工である父が建築現場まで連れていき
そこで面倒を見ていたとのこと。

1歳5か月違いの姉が親せきに預けられていたということは
その時わたしはどうしていたのだろう。。。

「みつえ(わたし)は施設に預けてた。」

「施設?」

「親のいない子が暮らしている施設だよ。
生後3か月だったから親せきにも預けられなくて
特別に許可して貰ったんだよ。」

ということです。

わたし、ここでちょっと疑問が湧いたんです。
●親せきに預けられた。
●生後3か月で施設に預けられた。

どちらが可哀想な印象がありますか?

わたしはただ聞いただけでは、施設に預けられたほうが不憫な印象があります。

あくまでも、ただ言葉として聞いた印象ですけど。

その疑問をただただ解消したくて母に聞いてみたんです。

「わたしは可哀想じゃないの?」

「あんたはまだ赤ん坊だったから
なんにもわかんないじゃない。
次女は夜寝るとき、天井が違うから
よく泣いてたって。」

なぁ~るほどぉ~!!

とても納得したのです。

客観的に見て、「かわいそう」と思える状況でも
本人に自覚が無ければ可哀想ではないんですね。

確かにわたしは預けられていた記憶はないし
月に数回家族でわたしに面会にきたときの写真を見て
「わたしって愛されてたんだ」
と思って過ごしてきましたから。

そんな話が家族の中で何度か出てきていました。

次女はちょっと卑屈なところがあり、何かというと
「どうせわたしは、、」
という言うのです。

姉ちゃんは母方の祖父に可愛がられ
みっちゃんは父方の祖父に可愛がられ
わたしは誰にも可愛がられていない。
とも言っていました。

祖父にとって長女は初孫で、横浜から当時住んでいた秦野までの50kmの距離を
タクシーで会いに来たり、高級な学習机や本革ランドセル、エレクトーンなど 、いろいろな物を買ってもらっていました。
(祖父は氷川丸の機関長や防衛大の準教授をしていたそう)

このように長女が可愛がられていたのは事実です。

わたしが生まれた頃には、祖父にも内孫がいて、内孫が可愛かったようで
わたしや次女は、ほとんど会話をした記憶がありません。

でも、わたしが父方の祖父に声をかけてもらったのは
たった1回です。

年に1回、父が実家に帰省するときにしか会わないのですが
かなり年も取っていたのもあり、いつも黙って座っている印象しかありません。

そして、あるとき5歳のわたしに話しかけたのですが
秋田弁で何を言っているのかわたしにはわからなかった上に
わたしは照れて父に背中に隠れたのです。

たったそれだけのことを「可愛がられた」と言ってひがんでいるのです。

そして、小学校卒業する前くらいのわたしは
そのことからわかったことがあるのです。

誰かが「可哀想」と言った瞬間に「可哀想な人間」が出来上がるのだと。

わたしの姉は、もし親が「この子は可哀想だ。」と言わずに育てたら
こんな卑屈なことを言わなかったんじゃないかと。

施設に預けられたわたしは「可哀想」と言われなかったお陰で
逆に愛されていたと思ってこれました。

もし、「月に数回しか面会に行けなくて申し訳ないと思ってる。」
とか、そういうことを聞いて育っていたらわたしの性格は違っていたかもしれない。
そして多くの人たちと接していく中で
この仮説は確信に変わっていきました。
親から「お前には無理」と言われた子は自信がないし
「いい子」と言われ続けた子は「親の言ういい子」を演じようと自分に制限をかけているし
「恥ずかしいことしないで・言わないで」と言われ続けた子は自分の意見を持てなくなるし
「好きなことをしなさい」といわれた子はなんでも挑戦するし
「元気でいいね」と言われ続けた子は元気だし。

わたしはこれを教訓にわが子を育て
有名飲食チェーン店では人材育成をし
塾では生徒を指導し、講師やクライアントさん、ママ友、、
出会った方すべてと接してきました。

まずは親や環境から刷り込まれた自己評価を
取っ払っうのが一番成長が早いということがわかりました。

人と会話していると
その人が発した言葉、選んだ語彙から
どんな刷り込みがあったか、なんとなくわかるのです。

本当の姿は、その奥にあるということを知っているので
その奥の素晴らしい本質を見つけてあげたい。

いつもそんな風に思って過ごしてきました。

続く

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